第7回 女性ががんを生きる
去る9月20日、鹿児島県文化センターにて「女性ががんを生きる」というテーマで、21世紀のがん医療を考えるフォーラムが開催された。当日は台風の進路にやきもきしながらの開催であったが、ホールには約1.100名もの聴衆が集まり、熱心に講師の話やトークディスカッションに聞き入った。
過去、このフォーラムは6回開かれており、今回が7回目。主催者によるとこれほどの多くの聴衆が集まったのは初めてで、市県民の関心の高さがうかがえた。
当日、会場ホールには乳がん体験者で組織する団体「集いいずみ」のメンバーによる活動案内や乳がん患者向け商品の紹介、書籍の販売なども同時に行われた。
プログラムは、もとアナウンサーの故逸見政孝氏夫人、エッセイスト逸見晴恵氏の講演「黙っているのもうやめた」の他、医師、乳がん体験者を交えたトークディスカッション「がんから得た私らしい生き方」の2部構成。逸見氏はご主人のがん闘病記をいろんなエピソードを交えて紹介するとともに、自分自身も夫の死後がんにかかった経験を交えて話した。
今回のフォーラムの中で一貫したテーマが「ドクターと患者の対等な関係」。これまで患者は「病気を治していただく」という観点から、どうしてもドクターと真正面
から向き合えなかった。 しかし、医療情報の進展や病気に対する考え方、特にがん告知に対する意識の変化に伴い、ドクターとの関わりも大きく変わってきている。その最たるものが「セカンドオピニオン」や「インフォームドコンセント」
主治医の他にもう一人のドクターの意見を求めることや、納得したうえで医療を受ける流れは今後ますます拡がりを見せていくものと思われる。
これからは患者自身も、もっともっと勉強する必要があり、ドクターから言われたことをただ素直に聞くだけではなく、疑問を素直にぶつけ、よりよい医療を選択する必要がある。
逸見氏からは、患者は要求だけではなく、犠牲も払うことも時には必要だという問題提起があった。
「これまでドクターが3分診療を行ってきたのには、“患者の話を3分聞いても10分聞いても収入は同じだ”という背景があったため、ドクターはどうしても診療で話を聞く時間に限界があったのではないか。こうした医療費制度の中で、国民も自腹を切るぐらいの柔軟さを持たなければならない時代に差し掛かっている」と意見を述べた。
また、さらに医者にかかる前に、聞きたいこと、言いたいこと、自分の現在の症状などをキチンとメモし、しっかり伝えることが必要。そしてまた、時と場合によってはテープレコーダーなどを持ち込むぐらいの覚悟が必要とも提起した。こうした案に対し、ドクターの側からは「うかつなことは言えなくなる、信頼関係が崩れる」という反発も予想され、今後医療側と患者側間での議論が必要なことと言えよう。
今回のフォーラムで、とりわけ注目を惹いたのが、トークディスカッションで登場したパネリストの三好綾氏。彼女の生き方に感動した人もかなり多かった模様。
28歳の若さで乳がんにかかり、右側の乳房を全摘出した大きな手術であったにもかかわらず、まったく悲壮感を感じさせない人柄で、聴衆も、もしがんにかかった場合彼女のような生き方ができたらいいなと自分自身に重ね合わせて感じた人が多かった様子。
三好氏は、もともと自分自身「ノーテンキ屋」と語っていたが、がんになったことにより誓いを立てたことが二つあったと紹介した。
一つ目は「がんだからと言ってあきらめることはしない」。
二つ目は「どうせやるなら明るく楽しく」ということ。
「がんになったからと言って、気分まで落ち込ませていてはそれこそがんの餌食になるだけ」と言い聞かせ明るく前向きに生きてきた体験をさりげなく紹介していた。
彼女ががんになってから現在に至るまでの日記を綴ったホームページ「うずの乳がんなんてやっつけろ」はその生き方に賛同した人たちや、同じ悩みを持った人たちの心の拠り所として多くの人々の賛同を得て、一日に500アクセスを記録しているという。さらに、これまで綴った体験をもとにした本が出版される予定で、悩みを持つ人たちへの明るく前向きなメッセージは、さらに大きな輪を拡げることが予想される。
うずの乳がんなんてやっつけろ ホームページは↓
http://homepage1.nifty.com/uzukoro/omoide/nyuuganhyousi.htm
相良病院のホームページは
http://www.sagara.or.jp/
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