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医療費はこれだけかかる

医療費のしくみ

皆さんが医療機関にかかったときの、医療費について簡単に説明します。と言っても、医療費の仕組みは誠に複雑で、すぐには理解できないような複雑な仕組みがあります。これが、ときどきマスコミで報じられる診療報酬・薬価改定で、しかも毎年3月末(診療報酬改定は2年に1回)に改定されます。

医療費(診療報酬)とは皆さんの診察でかかった、初診料(再診料)、慢性疾患の指導管理料、検査料、注射・投薬などをすべてを、医療機関は診療報酬明細書(レセプト)に記載し、翌月初めの指定日までに支払い基金の事務所に届ける必要があります。基金では専門家の委員が集まり、各医療機関より提出されたレセプトの審査を行います。ここで問題のあったレセプトや不明なレセプトは提出された医療機関に返戻される(翌月廻し)か、病名に合わない検査や投薬は減点されます。問題のないレセプトの医療費は3ヶ月後に各医療機関に支払われます。しかし、その後にも市町村や会社の独自の審査を受け再審査があることもあります。

 
外来診療費の自己負担
病気で医療機関にかかったときの支払いは、皆さんが持っておられる保険証の種類で2割-3割まで異なりますが、サラリーマン本人の負担は2割になりました。 なお、平成15年4月からは、3割負担になる予定です。

老人保健制度では、一般の方々の負担とはちがった制度になっています。14年4月より大病院 (ベッド数200以上)では定率1割負担ですが、負担額に上限が設けられており、院内で薬を受け取る場合は5.300円(200床未満の病院では3.200円)となっています。

一方 診療所においてですが、定率負担と定額負担の両方あり、これは受診した診療所によって異なります。定額負担の場合は、1回当たり850円で、月の上限が4回、3.400円(院内で薬を受け取る場合)までとなっております。

 

診察料、初診料

初診と再診で異なりますし、診療所と病院、一般・老人と乳幼児では診察料は違います。(レセプトでは点数で計算します。1点10円です。) また、時間外に診察を受けたときには午後10時まで85点深夜に診察を受けたときには(午後10時-午前6時)480点休日に診察を受けたときには250点の加算となります。

 
例えば5歳のお子さんが初診で、午後11時に診療所で診察を受けたときには、診察だけで【270(初診料)+102(時間外加算)+480(深夜加算)=852点】で8520円かかるわけです。これが高いかどうかは考え方ですが、急病以外は出来るだけ時間内に受診しましょう。
 
再診料
その病気の2回目以降の診察料です。 一般・老人では診療所1回目の再診が81点、2回目と3回目が74点 、4回目以降が37点となっています。病院の場合は200床未満を例にとってご説明します。1回目の再診は65点、2回目と3回目が59点、4回目以降が30点となっています。 乳幼児6歳未満お年寄りなどは別途加算が適用される場合があります。 もちろん時間外加算や休日加算なども別途かかることがあります。
 
特定疾患療養指導料

診察料とは別に慢性疾患(生活習慣病いわゆる成人病)対象の患者さんは、月2回を限度に特定疾患療養指導料が加算されます。(87点から225点)200床以上の病院では指導料はありません。診察料・指導料とも診療所を優遇しています。(患者さんは外来で全く同じ診察や治療を受けても診療所の方が医療費が高い事があり、病院でも病院の規模(病床数)で違います。病床の数で外来の診療費が違うというのは何となく矛盾を感じますね。)

この指導料は月2回ですので、同じ月に慢性疾患で3回以上診察を受けたときには3回目以降は加算されません。従って同じ診察、治療を受けても支払いが異なる事があります。 また、糖尿病・高血圧・高脂血症の方に、生活習慣病の特別 な指導料もできました。極端に高いのですが、一定部分まるめた計算(包括医療)ですので、なおわかりにくくなりました。3ケ月に一度、文章による指導内容が交付されることが原則となっていますので、文書を受け取るのも医療の中身について知るいい勉強になりますね。

 
投薬料・薬剤料
薬剤料は薬価基準によって計算されますが、薬価は1錠何十何銭という現在では使われていない銭の単位 で計算します。これも不思議な制度です。また、1昨年から1処方8種類以上の内服薬を処方した場合には全ての 薬剤料の90%しか算定できない規則となり、患者さんに混乱を与えています。その他、調剤料、処方料、薬剤情報提供加算などが加算されます。
 
診療機関で薬をもらわない場合(医薬分業)では、診療機関では処方箋料76点となり、調剤薬局では投薬料を支払います。調剤薬局の医薬分業制度は患者さんの自己負担は少し高くなりますが、内服指導や薬の管理、どこの薬局でも処方を受けられるなどのメリットもあります。30日分の投薬通 常の内服薬の投与は2週間(14日)と規定されていますが症状の落ちついた慢性疾患では30日投与が認められています。 これは、薬の種類、慢性疾患の病名で出来る薬と出来ない薬がありますので、患者さん個々で異なります。
 
同じ高血圧のAさんが4週間分処方を貰ったが、Bさんは2週間処方しかできないこともあるわけです。特に新しい薬(新薬)が処方された場合には30日処方は出来ません。但し、年末年始と4月-5月のゴールデンウィークに診察が重なるときには30日投与が出来るようになりました。しかし、これも通 常の連休には出来ません。
 
検査の料金
検査の料金は色々ありますが一般的な検査のみ記載します。
心電図検査 150点 負荷心電図 320点
ホルター心電図検査 1500点 超音波検査 腹部超音波検査 550点
心臓超音波検査 800点 その他の部位 350点
パルスドプラー加算 200点 内視鏡検査
胃・十二指腸ファイバー
1140点
生検 300点 大腸ファイバー 部位によって 900-1550点
眼底カメラ 56点 骨粗鬆症検査 骨塩定量 180点
糖尿病負荷試験  200点+薬剤 インシュリン測定 900点
レントゲン検査単純撮影 胸部・腹部
診断料81点、
撮影料65点+フィルム
胃透視検査・注腸検査 約1300点(前処置+フィルム含む)
コンピューター断層(CT検査) 頭部 665点、
躯幹 890点+フィルム
(大幅な引き下げ)
MRI 頭部 1680点、その他1800点+フィルム
血液検査 一般生化学検査は丸め 5-7項目 155点、8-9項目 175点10項目以上 185点 判断料 100点(月1回)
末梢血一般 30点 血沈 12点
尿検査一般 28点 便検査 潜血ヘモグロビン 65点
血液型 ABO 35点HbA1c 95点 腫瘍マーカー 1項目190-450点、2項目400点、3項目500点
肝炎ウィルス 1項目150-500点、3項目520点、4項目620点、5項目780点    

血液検査は他にも多種有りますが、一般に丸めと言われ多項目検査すれば漸減性が取られています。
 
入院料
入院料に関しては外来よりもっと複雑で簡単に述べることは出来ません。病院の体制、看護体制、環境、入院する患者さんの年令、疾患などで異なります。入院料は入院時医学管理料・入院環境料・入院医療管理料・入院食事療養・看護料が基本でそれに投薬料・注射料・検査料・手術料・処置料・理学療法料等が加わります。
 
入院医学管理料
一般病院では2週間まで571点/日が3ヶ月を越えると157点/日、1年を越えると101点/日となります。また、老人病院では2週間まで225点/日が3ヶ月を越えると162点/日、1年を越えると105点/日となります。このように一般 病院では漸減性が厳しく、急性期の治療が終われば早期退院を勧告される理由です。一方老人病院では最初から点数が低く押さえられています。
 
入院食事療養費
1日1920円、特別食加算は350円です。温かい食事、食事の時間の配慮、特に夕食を6時以降とする特別 管理加算は200円です。食事代の内自己負担金は760円/日と決まりましたが、これは窓口で徴収するだけで診療報酬より引かれ医療機関の増収ではありません。
 
入院料の支払い
老人患者さん以外は、入院料の内、保険種類での自己負担分を支払います。手術などで医療費が高額になる場合に、自己負担が月63600円を越える場合は高額医療の還付制度があります。最寄りの市町村役場や社会保険事務所の窓口でご相談下さい。老人患者さんは1日1100円+食費760円、合計1860円/日を支払います。今回より入院負担金が1100円に増額されました。これらの改定もあまり患者さんにも知らされず改定されます。
 

ざっと述べましたが、このように医療費は分かりにくいことばかりです。もっと簡潔な診療報酬制度を望んでいますが、ますます複雑に なるばかりです。 今後は介護保険の導入で在宅医療や慢性の老人医療は医療保険制度から外れる 可能性もあり、ますますわかりにくくなるものと思います。

通院時の負担について
社会保険の本人は医療費の2割、家族は3割を負担します。国民健康保険は世帯主、家族ともに3割負担となります。自宅での療養に用いる薬剤をもらった場合には、さらに薬剤の一部負担金が必要です。患者さんは医療機関の窓口で、この合計額を支払いますが、医療機関で処方せんの発行をうけ、保険薬局でお薬を貰うときは、薬剤代は薬局に支払うことになります。

70才以上の人は1日850円を月4回まで(定率負担を選択している診療所、及び病院は別 途)負担します。健康保険の本人・家族、国民健康保険、すべての場合で原則として70才以上の人は老人保健制度の医療を受けます。老人医療では通 院のときは、医療費の定率の一部負担金にかえて、同一の医療機関について1日850円を1ヶ月4回を限度に負担します。また70才以上の人が院外処方せんを持って保険薬局に行った場合、一部負担金を支払う必要はありませんが薬剤一部負担金は支払うことになります。

 
薬剤の負担について
通院して医療をうけて、薬剤をもらった場合には、薬剤についての一部負担金を保険医療機関あるいは保険薬局で支払います。医療費全体についての一部負担金は、社保本人・家族(老人)、国保で支払う割合がことなりますが、薬剤の一部負担金は同じしくみで負担することになっています。ただし、老人医療を受ける人の一部(市区町村民税非課税世帯などの老齢福祉年金を受けている人)や6才未満の子どもについては薬剤一部負担金は免除されます。なお老人の薬剤一部負担金については、平成11年度の出来るだけ早期から負担なしということになりました。
 
【患者負担額の実例(外来通院の場合)】

医科診療所・成人・風邪で2日間通院治療

初診料(1日目) 2700円
再診料(2日目) 740円
処置料(喉に薬を塗る処置) 120円×2回=240円
検査料(尿検査) 280円
投薬料 1420円
合計 5380円

本人の場合の一部負担金

一部負担金(医療費の2割)1076円
薬剤一部負担金 150円
合計 1230円
家族の場合 一部負担金(医療費の3割)1614円
薬剤一部負担金 150円
合計 1760円

但し、患者さんの病状の程度により通院日数・処置の内容・検査項目・薬品の内容及び種類・注射の有無によって医療費の額が当然変わって来ますので、すべてこの通 りの額になるとは限りません。また、院外処方せんを発行している医療機関では、院外処方料を医療機関で支払い、処方料・調剤料の2〜3割及び薬剤一部負担金は調剤薬局で支払う事になります。

 
【患者負担額の実例(入院の場合)】

入院して医療を受けたときは、本人・家族とも、かかった医療費の2割を負担します。さらに入院中の食事についての負担が必要です。患者さんは医療機関の窓口で、この合計額を支払います。なお、入院中に薬剤をもらっても、薬剤の一部負担金を支払う必要はありません。

健康保険の本人・家族であっても、原則として70才以上の人は、老人保健制度の医療をうけます。老人医療では、入院のときは、医療費の定率の一部負担金にかえて、入院1日につき1100円を負担します。市区町村民税非課税世帯などの老齢福祉年金受給者は、入院の一部負担金が軽減されており、入院1日につき500円を支払えばよいことになります。また、入院中の食事については、本人・家族・老人すべて1日につき760円の負担が必要です。市区町村民税非課税などの低所得者に該当する人については、申請によって、食事負担額が軽減されます。

例1.虫垂炎(盲腸)・病院・成人・初診即入院・7日間入院・新看護(2.5対1)・平均在院日数28日以内・入院食事療養(I)(2日間食事なし)・虫垂切除術の場合の計算は… =   但し、患者さんの重症度、合併症の有無、術後経過により医療費が大幅に変わることがありますが、大体の目安はこの通 りです。
初診料 2,500円
入院環境料  1650円×7日=11,550円
新看護料 7320円×7日=51,240円
入院医学管理料 45,220円
検査料 36,660円
画像診断料 15,120円
投薬料 2,460円
注射料 20,140円
処置料 5,840円
手術料 74,000円
麻酔料 9,710円
医療費合計 274,620円
入院時食事療養(I)
(2日間食事なし) 
1920円×5日=9,600円
総計 284,220円
一部負担金(本人・家族とも) 一部負担金(医療費の2割) 
274,620円×0.2=54,920円(10円未満四捨五入)
食事の負担額 760円×5日=3,800円 合計58,720円
例2.胃がん・病院・成人・初診即入院・30日間入院、新看護(2対1)・平均在院日数28日以内・入院時食事療養(I)(10日間食事なし)・胃悪性腫瘍手術の場合の計算は…
初診料 2,500円
入院環境料  1650円×30日=49,500円
新看護料 7500円×30日=225,000円
入院医学管理料 15000円×3日=158,440円
手術後医学管理料 45,000円
検査料 243,360円
画像診断料 104,020円
投薬料・注射料 127,320円
処置料 19,110円
手術料 319,000円
麻酔料 176,550円
医療費合計 1,469,800円
入院時食事療養(I)
(10日間食事なし) 
1920円×20日=38,400円
総計 1,508,200円
一部負担金(本人・家族とも) 一部負担金(医療費の2割)
1,469,800円×0.2=293,960円
食事の負担額 760円×20日=15,200円
合計309,160円

但し、入院日数、合併症の有無、術後経過、検査、投薬、注射等によって変わることがあり得ます。
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